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発散のスピード

≪極限における発散のスピード≫

級数とは、数や関数など互いに足すことのできる数学的対象の列について考えられる無限項の和のことで、k=1 ak という形の「無限和」を級数と呼ぶ。. このような級数の値は、部分和

Sn= k=1n ak
 = a1+a2+a3+⋯+an

を考え、{Sn}n=1,2,... という部分和からなる数列の極限 lim n Sn が存在するときに、その極限の値として

k=1n ak= lim n Sn
と定める。また、このような極限が存在するときに、級数 k=1 ak は収束すると言い、極限が存在しないときに、級数 k=1 ak は発散する、という。
極限を考えるときには、極限の値がどうなるかということと同時に、その極限の値に近付いてゆく収束のスピードということが、しばしば問題になる。
そこで、 に発散する代表的な数列について, 考えてみよう。

まず、 k=1,2,... として

an= nk
このような数列は多項式orderで発散する数列とも呼ばれる。
次に、1<aR として

bn= an
このとき、an は an=enloga とも表わすことができるので、こうした数列を指数 order で発散する数列とも呼ぶ。
さらに、

cn= n!
という数列を考えてみる。

ところで、n! という「数」はどれぐらいの大きさの「数」だろうか。
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図(1)
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図(2)
図(1)(2)より

1n logxdx k=1n logk 1n+1 logxdx  ……(1)

各項はそれぞれ

1n logxdx = [xlogx-x] 1n
  = nlogn-n+1

k=1n logk = log1+log2+log3+⋯+ logn
  = logn!


1n+1 logxdx = [xlogx-x] 1n+1
  = (n+1)log(n+1)-(n+1)+1

したがって

nlogn-n logn!-1
  ≤ (n+1)log(n+1)-(n+1)
ところで

nlogn-n= lognn-logen =log(ne)n

logn!-1= logn!-loge =log(n!e)
よって

log(ne)n log(n!e) log(n+1e)n+1

(ne)n (n!e) (n+1e)n+1  ……(2)
ということが分かる。
そこで、これらの数列の発散のスピードを検討してみよう。
先ずは、多項式orderの数列と指数orderの数列とを比較してみよう。

lim n nk an
いま、1<aR  より a=(1+b) とすると

nk an = nk (1+b)n
n>k+1 とすると

lim n nk an = lim n nk (1+b)k+1    · 1 (1+b)n-k-1    =0
このことは、k=1,2,3,・・・ がどんな数であっても、 n が十分大きくなれば、指数orderの数列の方が多項式orderの数列よりずっと早く大きくなってしまう、ということを表わしている。

次に、指数orderの数列と階乗の数列をみてみよう。

lim n an n!
(2)式
(ne)n (n!e)
より
1n! 1e ( en )n
したがって
ann! 1e ( aen )n
いま、n>2ae とすると aen<12 より
0 ann! 1e ( aen )n <1e (12)n
ところで
lim n 1e (12)n =0
より
lim n ann! =0
となることが分かる。
したがって、a>1 がどんな数であっても cn=n! は指数オーダーの数列よりさらに早く大きくなるとが解釈できる。
そもそも(2)式より n! (ne)n 位の大きさであることは分かるが、(ne)n とは、「公比」がどんどん大きくなる「等比数列」のようなものである、と考えると n! の方が an より早く大きくなることが分かる。



<「牛腸作 数学IB演習」・独習ノートより>

(1)テーラー展開とはなにか
(2)テーラー展開の注意点
(3)部分積分とテーラーの定理
(4)テーラーの定理・剰余項の考察
(5)テーラー多項式の考察
(6)テーラー展開の計算
(7)合成関数のテーラー展開
(8)近似式としてのテーラー展開
(9) a のまわりでのテーラー展開
(10)テーラーの定理・極限
(11)多変数のテーラー展開
補論・積分に関する「平均値の定理」
補論・級数の収束判定
補論・ロルの定理・考察
補論・偏微分(1)偏導関数
補論・偏微分(2)ヤングの定理
余録・バーゼル問題とテーラー展開

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