≪ x = a のまわりでのTaylor展開≫
勝手な滑らかな関数
と勝手な自然数
に対して「次元が有限な多項式の姿」に「化かす」と
……(1)
……(2)
という式が成り立つ。
また、剰余項
は「積分に関する平均値の定理」より
となるような実数
の間に存在する。
すると、(1)式は
……(3)
と書き表わすことができる、ということを見てきた。
これまで、Taylor多項式
は
というような、「
のベキの形」をした Taylor多項式を考えてきた。というのも「
の近くでは
となる」から 「
の近くで」関数
が「化け」ようとした「多項式の姿」が
である、と解釈できるからであった。
それでは、「
など、必ずしも原点とは限らない実数直線
を考えた場合、
の近くで関数
はどのような「多項式の姿」に見えるのだろうか。
これまでの考察で「
の近く」で関数
が 「
のベキの形」をした多項式と解釈できたのは「
の近くでは
となる」からであった。したがって、勝手にひとつ取ってきた実数
に対して、「
の近くでの近似多項式」を考える場合、「化ける」べき「多項式の姿」として 「
のベキの形」ではなく、
となる
のベキの形
が推測される。
ところで、(3)式において、一般の滑らかな関数
とすると
……(4)
のように書き表わせ、そしてこのとき
の間に存在する。
(4)式においてとくに
としてみると
……(5)
となるような実数
の間に存在することになる。
(これが、一般の Taylorの定理を考察する鍵となる)
そこで、いま関数
を剰余項付きで「
のベキの形をした多項式の姿」に「化かす」問題を考えるに、実数
が勝手にひとつ与えられたとして、実数直線
上で展開に中心点である
と関数の値を考える点である
とを結ぶ直線を
として
という関数を補助的に考えてみる。すなわち、変数 t を時間と解釈して,時刻 t=0 で a を出発して、時刻 t=1 で点 x に到着するような実数直線
上を一定の速度で運動するような粒子を考えたときに、時刻 t で粒子がいる場所での関数
と定める、というイメージである。
ところで、
の導関数は
したがって、
いま、
の間にある実数とすると
は、
の間にある実数であることに注意して、これらの計算結果を(5)式に代入すると、結局、一般の滑らかな関数
に対して、
として
……(6)
となる実数
が
の間に存在する。
こうして、一般の滑らかな関数
を剰余項付きで「
のベキの形をした多項式の姿」に「化かす」ことができる。
こうして得られた(6)式の結果を「
のまわりでの Taylorの定理」と呼ぶ。また、(6)式の右辺に現われた n 次の多項式
……(7)
を「
のまわりでの Taylor多項式」と呼ぶ。
また、「
のまわりでの Taylor多項式」は、(6)式をもとにして
に対して
が成り立つような n 次の多項式として一意的に特徴付けられることも分かる。
<「牛腸作 数学IB演習」・独習ノートより>
(1)テーラー展開とはなにか
(2)テーラー展開の注意点
(3)部分積分とテーラーの定理
(4)テーラーの定理・剰余項の考察
(5)テーラー多項式の考察
(6)テーラー展開の計算
(7)合成関数のテーラー展開
(8)近似式としてのテーラー展開
(10)テーラーの定理・極限
(11)多変数のテーラー展開
補論・積分に関する「平均値の定理」
補論・発散のスピード
補論・級数の収束判定
補論・ロルの定理・考察
補論・偏微分(1)偏導関数
補論・偏微分(2)ヤングの定理
余録・バーゼル問題とテーラー展開