≪Taylor の定理と極限≫
いま、次のような関数の極限を考えてみる。
(1) の場合
のまわりで、
というように展開されるので
したがって、
(2) の場合
のまわりで、
というように展開される(
導出詳細)ので
<導出詳細>
したがって
(
隠す)
したがって、
となることが分かる。
いま、
を, 勝手にふたつ与えられた
上の滑らかな関数であるとして
という極限を求める場合、「多項式の姿」を借りて計算することについて考えてみよう。
そこで、まず、
を,Taylor の定理を用いて
……(1)
というように、剰余項付きで「0次式の姿」に展開できたとすると、与えられた極限は
……(2)
(注
の間にあるから、
となる)
(2)式は、極限の計算方法に他ならない。
ただし、
となっている場合には、0/0 の不定形になってしまうから、このときには(1)式の代わりに、さらに近似を上げて
……(3)
というように、剰余項付きで「1次式の姿」で表わすことができる。すると、与えられた極限は
……(4)
c
というように求まることが分かる。
以下、同様に考えると、
として、
のときには、
……(5)
というように、極限の値が求まることが分かる。
ところで、(4)式はロピタルの定理(の特別な場合) に他ならない。
ロピタルの定理は通常の方法では求めることが困難な極限問題に対しても強力な手法であるが、それが常に簡単とは限らない、として、次のような例が紹介されている。『wikipedia』
この極限はロピタルの定理を用いると、
一方、この極限を計算するに、Taylor 展開を用いると
以上、例題でみてきたように、与えられた極限を求める場合、むやみに微分するのでなく、
を「0でない多項式の姿」に「化かして」から極限を考察する、というにすれば、計算間違いも少なくなるし、暗黙の裡に前述のような考察を行なっていることになる。
<「牛腸作 数学IB演習」・独習ノートより>
(1)テーラー展開とはなにか
(2)テーラー展開の注意点
(3)部分積分とテーラーの定理
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(6)テーラー展開の計算
(7)合成関数のテーラー展開
(8)近似式としてのテーラー展開
(9) a のまわりでのテーラー展開
(11)多変数のテーラー展開
補論・積分に関する「平均値の定理」
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余録・バーゼル問題とテーラー展開