≪Taylor展開の計算≫
二つの関数
の Taylor 多項式は計算できるものとしたときに、
などの関数の Taylor 多項式をどのようにして求めることができるのか、すなわち「 Taylor 展開が計算できる関数たちの組み合わせ」として表わされる関数の Taylor展開が、それぞれの関数の Taylor展開からどのようにして計算できるのか、を考えてみよう。
まず、滑らかな関数
は
……(1)
……(2)
と書き表わすことができる。
いま、(1)式の右辺に現われる多項式の係数を
として、Taylor多項式を単に
……(3)
と書き表わすことにする。(以下、同様)
また(2)式の剰余項については、
として、右辺に現われる積分の積分変数を
に変数変換すると
ここで
とすると
したがって
……(4)
また「積分に関する平均値の定理」を用いると
……(5)
となるような実数
の間に存在する。
このとき、
となるから
……(6)
という有限な値になることが分かる。
以上、前準備ができたので、まず
の場合について考えてみよう。
いま、
の Taylor展開を、それぞれ
……(7)
……(8)
と表わすことにすると
……(9)
と表わせることが分かるから、(9)式が Taylor展開を与えるのではないか、と思われる。
そこで、
の Taylor多項式を、それぞれ
……(10)
……(11)
と表わすことにすると、
は(4)式を適用して
……(12)
……(13)
と表わせるから
ここで、
に対して
となることが分かる。
ところで、「Taylor多項式の考察」でみたように、
に対して
を満たすような n 次の多項式
の Taylor多項式
しか存在しないから
となることが分かる。
したがって、
の Taylor多項式は(9)式のように計算され、関数
の Taylor展開を与えていることが分かる。
(例)
の Taylor展開は
次に、スカラー倍
をみてみよう。
いま(7)式の両辺に
を掛けてみると
は
(12)式より
ここで、
に対して
したがって、前と同様、関数
の Taylor多項式
は
となることが分かる。
(例)
の Taylor展開は
さらに、
の場合、
(7),(8)式より
……(14)
さて、Taylor多項式の積
の多項式において(
) n次式以下の部分と (n+1)次式以上の部分をそれぞれ
とすると
……(15)
また(12),(13)式より
したがって
⋯
……(16)
ところで、(16)式の右辺に現われるすべての項が
で括れるから
に対して
となることが分かる。したがって
となることが分かる。
(例)
とすると (14)式より
の Taylor展開は
というように計算される。
最後に、
として
の Taylor展開を考えてみよう。
いま、
とすると積の計算であるから、問題は
を求めることにある、と考えることができる。
そこで、
として関数
の Taylor展開を
……(17)
……(18)
とすると、
いま、
より
係数を比較して
いま、
と仮定しているから
に注意すると上記の連立方程式を(18)式の係数を適用して上から順番に解くことができる。
例えば
とすると
より
したがって
……(19)
ところで、
というような計算もできる。
<「牛腸作 数学IB演習」・独習ノートより>
(1)テーラー展開とはなにか
(2)テーラー展開の注意点
(3)部分積分とテーラーの定理
(4)テーラーの定理・剰余項の考察
(5)テーラー多項式の考察
(7)合成関数のテーラー展開
(8)近似式としてのテーラー展開
(9) a のまわりでのテーラー展開
(10)テーラーの定理・極限
(11)多変数のテーラー展開
補論・積分に関する「平均値の定理」
補論・発散のスピード
補論・級数の収束判定
補論・ロルの定理・考察
補論・偏微分(1)偏導関数
補論・偏微分(2)ヤングの定理
余録・バーゼル問題とテーラー展開