≪合成関数のTaylor展開≫
のそれぞれの Taylor展開の結果から合成関数
のTaylor展開を求める。
いま、関数
の Taylor展開は「
が 0 の近くにいる状況を考えている」わけだから、このとき「
の近くにいる状況を考える」ことになる。
そこで、
を仮定する。
(
として、変数
に替えて考えることになる)
いま、関数
の Taylor展開を
……(1)
……(2)
と表わすことにする((2)式では、
を仮定しているので、
の項はない)。
すると
……(3)
と表わせる。(3)式が関数
の Taylor展開を与えるものと推測される。
そこで、そのことを確認しよう。
を前回用いた Taylor多項式と剰余項で表現すると
……(4)
……(5)
これらの表示を用いて
を表わすと
……(6)
(6)式は一見複雑そうに見えるが、
のベキごとに整理すると
という形にまとめなおすことができる。
ここで大事なことは、
が現われる項は全て
で括れてしまう、ということ。すなわち、これらの項はすべて
の部分に含まれてしまう、ということである。
したがって、関数
の Taylor多項式
を求めるためには
として、計算すれば十分であることが分かる。
そして
となることを確かめることで
を前回と同様にして証明することができる。
(例)
のまわりでの) Taylor展開
は
したがって
一方、
は
とすれば
というように計算される。
≪極限への適用≫
(例)
が存在するとき、
の値とこの極限
のまわりでの Taylor展開を考えると
いま
を
という剰余項付きの展開式で考えると、前回みたように
という有限な値をとる。
したがって
に対して
となる。
そこで問題に帰ると
この極限値が有限の値になるためには、最低でも 0/0 の不定形にならなければならないから
そこで
として
与えられた極限を考えると
上と同様に
同様に考えると
したがって
という条件式が成立する。
このとき
条件式より
を得るから
<「牛腸作 数学IB演習」・独習ノートより>
(1)テーラー展開とはなにか
(2)テーラー展開の注意点
(3)部分積分とテーラーの定理
(4)テーラーの定理・剰余項の考察
(5)テーラー多項式の考察
(6)テーラー展開の計算
(8)近似式としてのテーラー展開
(9) a のまわりでのテーラー展開
(10)テーラーの定理・極限
(11)多変数のテーラー展開
補論・積分に関する「平均値の定理」
補論・発散のスピード
補論・級数の収束判定
補論・ロルの定理・考察
補論・偏微分(1)偏導関数
補論・偏微分(2)ヤングの定理
余録・バーゼル問題とテーラー展開