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平均値の定理・積分

≪積分に関する平均値の定理≫

<重みを付けた平均値>
いま、国語、数学、英語などの科目を単に1科目目、2科目目、・・・・ と呼ぶことにして、i=1,2,3, i 科目目の試験の点数を g(i) と表わすことにする。
このとき、試験の総点を S とすると、n科目の総点は

S = i=1 n g(i)
と表わすことができる。
そこで平均点を考えると、平均点 A とは全ての科目の点数が A 点だ、と仮定したときの総点が、実際の総点と等しくなるような点のことであるから、

i=1 n g(i) = i=1 n A
であり、平均点 A は

A= ( i=1 n g(i)) n
と表わせる。
ところで、試験の成績について特定の科目をより高く評価したい、という場合がある。例えば、国語はそれほどできなくとも良いから、数学が良く出来る人をより高く評 価したいと考えたとすると、評価点として「重み」を付加した得点を考えることができる。一般に科目の数が nN であるとして i 科目目の「重み」を h(i) とすると、それぞれの科目の素点 g(i) に「重み」を加味した「重み付きの総点」を考えることができる。
すると、「重み付き総点」 S は

S= i=1 n h(i) g(i)  ……(1)
また、「重み付き平均点」 A をすべての科目の点が A点だ、と仮定したときの「重み付き総点」が、実際の「重み付き総点」と等しくなるような点とすると

i=1 n h(i) g(i) = i=1 n h(i) A
ところで

i=1 n h(i) A = ( i=1 n h(i) ) ·A
であるから、「重み付き平均点」 A は

A= i=1 n h(i) g(i) i=1 n h(i)   ……(2)
と書き表わせることが分かる。

一般に nN として

g:{1,2,3,,n}R
h:{1,2,3,,n}R
という二つの関数が与えられているときに、(1)式で与えられる S を h(i) という「重み」の付いた「重み付きの総和」と呼び、(2) 式で与えられる A を「重み付き平均値」と呼ぶ。但し「重み付き平均値」 A を考える場合には、勝手な番号 i{1,2,3,,n} に対して

h(i) 0
となるということを仮定する。
もちろん、マイナス評価も可能ではある。例えば、国語を(-)2倍に評価し、数学を2倍、英語を1倍に評価するとするとして、

S=(-2)g(1)+ 2g(2)+ 1g(3)
という「重み付き総点」を考えることもできるが、そうすると、3科目の点が、100点、100点、0点の場合も、0点、0点、0点の場合も、「重み付きの平均点」はどちらも 0点となってしまう。この場合,「重み付きの平均点」の情報から、実際にどのくらいの点数を取ったのかという情報は拾えなくなってしまう。また、3科目の点が、例えば、0点、100点、0点であるとすると,「重み付きの平均点」は 200点になってしまい, それぞれの科目の最高点である 100点を越えてしまう。このように, 高い点数を取れば取るほど + に評価される科目と、高い点を取れば取るほど − に評価されてしまう科目が混在してしまうときには, (2) 式のような「重み付きの平均値」を考えても余り意味がないことになる。

<積分における平均値>
さて、今まで関数 g(i) が i{1,2,3,,n} というように飛び飛びの値を取る場合について平均値を考えてきたが、関数 g(t) の変数が tR というように連続的に変わる場合について考えてみよう。

いま、R 上の滑らかな関数 f:RR に対して

S= i=1 n f(i)
という「和」を考えると、

f(i) = f(i)·1
と考えて、f(i) を幅が 1 で高さが f(i) の長方形の面積を表わしていると考えてみると、その「和」は、「幅が 1 の短冊の面積の和」を表わしている、と解釈できる。

一方、a,bR を a<b となる実数として

S= ab f(t)dt
という積分を考えてみると、 S は閉区間 [a,b] における関数 f(t) のグラフの下の面積を表わしている。
また、この面積は

S= ab f(t)dt lim n i=1 n f(ti) Δti

というように、「幅が b-an の短冊の面積の和」の極限として理解することができる。
(但し、nN に対して、閉区間 [a,b] を n 等分したときの分点を
a=t0<t1<t2<<tn-1<tn=b
i=1,2,3,n に対して
Δti= ti- ti-1 =b-an
とする)

このように、一方は幅が 1 の短冊を考え、もう一方は幅が「無限小」の短冊を考える、という差はあるが、いずれも「短冊の面積の和」として解釈できることが分かる。
そこで、いま g:RR  h:RR という2つの滑らかな関数が与えられている、とする。
このとき(1)式に対応した式は

S= ab h(t) g(t) dt   ……(3)

となるが、この積分 S を区間 [a,b] 上における関数 g(t) の h(t) という「重み」のついた「重み付きの総和」と呼ぶ。
また(2)式に対応する式を考えると

ab h(t) g(t) dt = ab h(t) A dt

A= ab h(t) g(t) dt ab h(t) dt   ……(4)

この AR を区間 [a,b] 上における関数 g(t) の「重み付き平均値」と呼ぶ。
ただし、「重み付き平均値」を考える場合、「重み」は 0 以上の数とするのが普通で

t[a,b]  のとき  h(t) 0   ……(5)
かつ(4)式の分母が 0 にならないように

ab h(t) dt >0   ……(6)
と仮定する。
(すなわち h(t) が連続関数であるとすると, (5) 式の条件のもとで,(6) 式の条件は「 h(t) が恒等的に 0 という定数関数ではない」ということを意味する)

ところで、いま、区間 [a,b] における関数 g(t) の最大値、最小値を

m= mint[a,b] g(t)
M= maxt[a,b] g(t)
とすると
mAM


<proof>
mg(t)M
両辺に h(t)>0 を掛けると t[a,b] のとき

h(t)·m h(t)·g(t) h(t)·M
m· ab h(t) dt ab h(t) g(t) dt M· ab h(t) dt

ab h(t) dt>0 で両辺を割ると

m ab h(t) g(t) dt ab h(t) dt   M

よって、積分区間 [a,b] の中に「重み付き平均値」 A という点を取る点 θ[a,b] が存在するということが分かる。

g(θ)=A

この事実を「積分に関する平均値の定理」と呼ぶ。



<「牛腸作 数学IB演習」・独習ノートより>

(1)テーラー展開とはなにか
(2)テーラー展開の注意点
(3)部分積分とテーラーの定理
(4)テーラーの定理・剰余項の考察
(5)テーラー多項式の考察
(6)テーラー展開の計算
(7)合成関数のテーラー展開
(8)近似式としてのテーラー展開
(9) a のまわりでのテーラー展開
(10)テーラーの定理・極限
(11)多変数のテーラー展開
補論・発散のスピード
補論・級数の収束判定
補論・ロルの定理・考察
補論・偏微分(1)偏導関数
補論・偏微分(2)ヤングの定理
余録・バーゼル問題とテーラー展開

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