摘要ノート「資本論」(19)

第六章 不変資本と可変資本

労働者は、彼の労働の特定の内容や目的や技術的性格を別とすれば、一定量の労働をつけ加えることによって労働対象にあらたな価値をつけ加える。他方では、われわれは消費された生産手段の価値を再び生産物価値の諸成分として、たとえば綿花や紡錘の価値を糸の価値のうちに見いだす。つまり、生産手段の価値は、生産物に移転されることによって、保存されるのである。労働者は同じ時間に二重に労働するのではない。…彼は、ただ新たな価値をつけ加えるだけのことによって、元の価値を保存するのである。しかし、労働対象に新たな価値をつけ加えることと、生産物のなかに元の価値を保存することとは、労働者が同じ時間にはただ一度しか労働しないのに同じ時間に生みだす二つのまったく違う結果なのだから、このような結果の二面性は明らかにただ彼の労働そのものの二面性だけから説明のできるものである。おなじ時点に彼の労働は、一方の属性では価値を創造し、他方の属性では価値を保存または移転しなければならない。

労働は具体的な有用労働であると同時に抽象的人間労働であるという二重の性格を持っている。紡績労働者の労働は、抽象的人間労働という属性において綿糸に新しい価値を付け加え、具体的有用労働という属性において生産手段の価値を綿糸のうえに移して維持する。

ある使用価値が新たな使用価値の生産のために合目的に消費されるかぎり、消費された使用価値の生産に必要な労働時間は、新たな使用価値の生産に必要な労働時間の一部分をなしており、したがって、それは、消費された生産手段から新たな生産物に移される労働時間である。だから、労働者が消費された生産手段の価値を保存し、またはそれを価値成分として生産物に移すのは、彼が労働一般をつけ加えるということによってでなく、このつけ加えられる労働の特殊な有用的性格、その独自な生産的形態によってである。このような合目的な生産活動、…労働は、その単なる接触によって生産手段を死からよみがえらせ、それを活気づけて労働過程の諸要因となし、それと結合して生産物になるのである。また、彼が一定の価値量をつけ加えるのは、彼の労働がある特殊な有用的内容をもっているからではなく、それが一定時間継続するからである。つまり、その抽象的な性質において、人間労働力の支出として、紡績工の労働は、綿花や紡錘の価値に新価値をつけ加えるのであり、そして、紡績過程としてのその具体的な特殊な有用な性質において、それはこれらの生産手段の価値を生産物に移し、こうしてそれらの価値を生産物のうちに保存するのである。それだから、同じ時点における労働の結果の二面性が生ずるのである。労働の単に量的な付加によって新たな価値がつけ加えられ、つけ加えられる労働の質によって生産手段の元の価値が生産物のうちに保存される。

 およそ生産手段として消費されるものは、その使用価値であって、これの消費によって労働は生産物を形成するのである。生産手段の価値は実際は消費されるのではなく、したがってまた再生産されることもできないのである。それは保存されるが、しかし、労働過程で価値そのものに操作が加えられるから保存されるのではなく、価値が最初そのうちに存在していた使用価値が消失はするがしかしただ別の使用価値となってのみ消失するから保存されるのである。それゆえ、生産手段の価値は、生産物のうちに再現はするが、しかし、正確にいえば、再生産されるのではない。生産されるものは、元の交換価値がそのうちに再現する新たな使用価値である。

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