摘要ノート「資本論Ⅱ」(12)

第一篇 資本の諸変態とその循環

第五章 流通期間

生産部面と流通部面の二つの段階を通る資本の運動は、…時間的な順序をなして行なわれる。資本が生産部面に留まっている期間は資本の生産期間であり、流通部面に留まっている期間は資本の流通期間である、したがって、資本がその循環を描く総期間は生産期間と流通期間との合計に等しい。

流通期間と生産期間とは互いに排除しあう。資本はその流通期間には生産資本としては機能せず、したがって商品も剰余価値も生産しない。…資本の流通期間は一般に資本の生産期間を制限し、したがって資本の価値増殖過程を制限する。しかも、それを流通期間の長さに比例して制限する。ところが、この長さは非常に違った程度で増減することがありえ、したがって非常に違った程度で資本の生産期間を制限することがありうる。しかし、経済学の見るものは、現象として現われるもの、すなわち、流通期間が資本の価値増殖過程一般に及ぼす影響である。経済学はこの消極的な影響を、その結果が積極的だという理由から、積極的なものと考える。経済学がますますこのような外観に執着するのは、それが次のことの証明を与えるように見えるからである。すなわち、資本は自己増殖の神秘的な源泉をもっていて、この源泉は資本の生産過程にかかわりなしに、したがって労働の搾取にはかかわりなしに、流通部面から資本のもとに流れてくるものだ、ということの証明を与えるように見えるからである。
 この外観は、次のようないろいろな現象によって強固にされる。
(1)資本家的な利潤計算の仕方。そこでは消極的な原因が積極的な原因として現われる。というのは、流通期間だけが違ういろいろな投下部面にあるいろいろな資本にとっては、より長い流通期間は、価格引き上げの原因として、要するに利潤の平均化の諸原因の一つとして、働くからである。
(2)流通期間は回転期間のひとつの契機であるに過ぎない。ところが、回転期間は生産期間または再生産期間を含んでいる。生産期間のせいであることが、流通期間のせいであるように見える。
(3)可変資本(労賃)への諸商品の転換は、前もって諸商品が貨幣に転化していることを必要条件とする。だから、資本の蓄積にさいしては追加可変資本への転化は、流通部面で、または流通期間中に、行なわれるのである。それゆえ、このようにして行なわれる蓄積は流通期間のおかげであるかのように見えるのである。

商品資本の流通 W'-G' については、商品そのものの存在形態によって、使用価値としての商品の存在によって、一定の限界が引かれている。いろいろな商品の使用価値のあるものはより短くあるものはより長く損傷せずに流通段階W-Gで商品資本としてもちこたえることができ、あるものはより短い、あるものはより長い流通期間のあいだ商品としてもちこたえることができる。商品体そのものの損傷による商品資本の流通期間の限界は、流通期間のこの部分の、すなわち商品資本が商品資本として過ごすことのできる流通期間の、絶対的な限界である。それゆえ、ある商品がいたみやすいものであり、したがって生産されたらすぐ消費されなければならないものであり、したがってまたすぐ売られなければならないものであればあるほど、それだけその商品は生産場所からわずかしか離れられないのであり、それだけ空間的流通部面は狭く、それだけその販売市場は局地的な性質のものになるのである。だから商品がいたみやすくてその物的性状のために商品としての流通期間の絶対的な制限が大きければ大きいほど、それだけその商品は資本主義的生産の対象としては適当でないのである。このような商品は、ただ、人口の多い地方だけで、または運輸機関の発達によって地域的距離が短縮される程度に応じて、資本主義的生産の対象になることができるだけである。

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