摘要ノート「資本論Ⅱ」(13)
第一篇 資本の諸変態とその循環
第六章 流通費
第一節 純粋な流通費
一 売買期間
二 簿記
三 貨幣
第二節 保管費
第三節 運輸費
一般的な法則は、ただ商品の形態転化だけから生ずる流通費はすべて商品に価値をつけ加えない、ということである。流通費はただ価値を実現するための、または価値を一つの形態から別の形態に移すための、費用でしかない。この費用に投ぜられる資本は、資本主義的生産の空費に属する。その補填は剰余生産物のうちからなされなければならない。そして、この補填は、資本家階級全体について見れば、剰余価値または剰余生産物からの控除をなすのであって、それは、ちょうど労働者にとって自分の生活手段の買い入れに費やす時間が無駄な時間であるようなものである。しかし、運輸費は非常に重要な役割を演ずるものだから、ここでもう少しそれを見ておかなければならない。資本の循環のなかでは、そしてその一節をなす商品変態のなかでは、社会的労働の素材変換が行なわれる。この素材変換は、生産物の場所変換、すなわち一つの場所から別の場所への現実の運動を必要とすることもありうる。しかし、商品の流通は、商品の物理的な運動がなくても行なわれうる。そして、生産物の運輸は、商品流通がなくても、また直接的生産物交換がなくてさえも、行なわれうる。それゆえ資本主義的生産の基礎の上では運輸業が流通費の原因として現われるとしても、この特殊な現象形態は少しも事柄を変えないのである。生産物の量は、その運輸によって増えはしない。また、運輸によってひき起こされるかもしれない生産物の自然的性質の変化も、ある種の例外を除けば、もくろまれた有用効果ではなく、やむをえない害悪である。しかし、物の使用価値はただその消費によってのみ実現されるものであって、その消費のためには物の場所の変換、したがって運輸業の追加生産過程が必要になることもありうる。だから、運輸業に投ぜられた生産資本は、一部は運輸手段からの価値移転によって、一部は運輸労働による価値付加によって、輸送される生産物に価値をつけ加えるのである。このような、運輸労働による価値付加は、すべての資本主義的生産でそうであるように、労賃の補填と剰余労働とに分かれるのである。資本主義的生産様式は、運輸交通機関の発達によって、また運輸の集中によって、個々の商品の運輸費を減少させる。この生産様式は、まず第一にあらゆる生産物の大多数を商品に転化させることによって、その次には局地的な市場に代わる遠隔の市場をつくりだすことによって、生きている労働も対象化された労働も含めての社会的労働のうちから商品運輸に支出される部分を増加させる。流通、すなわち商品が実際に空間を走り回るということは、商品の運輸に帰着する。運輸業は一面では一つの独立な生産部門をなしており、したがってまた生産資本の一つの特殊な投下部面をなしている。他面では、それは、流通過程のなかで、そして流通過程のための、生産過程の継続として現われるということによって、区別される。