摘要ノート「資本論Ⅱ」(30)

第三編 社会的総資本の再生産と流通

第二十章 単純再生産

第一節 問題の提起

社会的資本-つまり個別的諸資本がその断片をなすにすぎない総資本であって、これらの断片の運動はそれらの個別的運動であると同時に総資本の運動を構成する環でもある-、この社会的資本の一年間の機能をその結果において考察するならば、すなわち、社会が一年間に供給する商品生産物を考察するならば、社会的資本の再生産過程はどのように行なわれるのか、どんな性格がこの再生産過程を個別資本の再生産過程から区別するのか、そしてどんな性格がこれらの両方に共通なのか、が明らかになるにちがいない。年間生産物は、社会的生産物のうちの資本を補填する諸部分すなわち社会的再生産を含むとともに、消費財源にはいって労働者や資本家にとって消費される諸部分を含んでおり、したがって生産的消費とともに個人的消費を含んでいる。それはまた資本家階級と労働者階級との再生産(すなわち維持)を含んでおり、したがってまた総生産過程の資本主義的性格の再生産を含んでいる。

しかも、われわれの当面の目的のためには、再生産過程は、W’の個々の成分の価値補填と素材補填との両方の立場から考察されなければならない。われわれは、もはや、個別資本の生産物価値を分析するときとはちがって、個別資本家が自分の商品生産物の販売によって自分の資本の諸成分をまず貨幣に転化し次に商品市場での生産要素の再購買によって生産資本に再転化できるという前提で満足することはできない。かの生産要素は、それが物的性質のものであるかぎり、それと交換されそれによって補填される個別完成生産物と同様に、社会的資本の一成分をなしている。他方、社会的商品生産物のうち労働者が自分の労賃の支出によって消費し資本家が剰余価値の支出によって消費する部分の運動は、総生産物の運動を構成する一環をなしているだけでなく、個別的諸資本の運動とからみ合っており、したがってその過程は単にそれを前提することだけによって説明することはできないのである。-(生産物価値の一部分が資本に再転化し、他の一部分が資本家階級と労働者階級との個人的消費にはいるということは、総資本が結実した生産物価値 そのもののなかでの運動を形成する。そして、この運動は、価値補填であるだけでなく素材補填でもあり、したがって、社会的生産物のいろいろな価値成分の相互の割合によって制約されているとともに、それらの使用価値、それらの素材的な姿によっても制約されているのである)

すぐ目の前にあるのは次のような問題である。すなわち、生産中に消費される資本はどのようにしてその価値を年間生産物によって補填されるのか、また、この補填の運動は資本家による剰余価値の消費および労働者による労賃の消費とどのようにからみ合っているか、である。そこで、まず問題になるのは単純な規模での再生産である。

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