( は上の線形空間であるとし の場合で考察する。)
いま、 の基底{ }をひとつ取ってきて
……(A)
というように に「番地割り」をして考えてみる。その場合、どのような「番地割りの基準」のもとで、どのような「番地」をもつ元を考えているのか、という2つの情報を同時に表すために
いま、 を勝手に2つ取ってきて
……(1)
……(2)
と表わすとすると、(1)(2)式は
……(3)
と表わせることに注意して
として(3)式を
……(4)
というように表すことにする。そこで { } が の基底となるための条件を考えてみる。そのために { } も の基底となった、と仮定してみよう。 するとこのとき、基底 { } を用いて に「番地割り」することができるから を { } で表わすことができる。
すなわち、 として を
……(5)
……(6)
というように表わすことができる。そこで
として
……(7)
と表せることが分かる。少しややこしくなりましたが、要するに、 は{ }という基底を用いた「番地割り」のもとで に割り振られる「番地」であり、 は{ }という基底を用いた「番地割り」のもとで に割り振られる「番地」を並べてできる行列である。
そこでいま、(7)式に(4)式を代入してみる。すると
……(8)
そこで
とすると
……(9)
ここで(9)式は、{ }という基底を用いた「番地割り」のもとで に
……(10)
全く同様に、(4)式に(7)式を代入すると
……(11)
となるが、上と同様に考えると(11)式より
……(12)
となることが分かる。したがって、(10)(12)式より
以上から { }が の基底となるためには(4)式の右辺に現われる行列は正則行列でなければならないことが分かった。
そこで行列 が正則行列である、と仮定したとき { }が の基底となることができるか、を考えてみよう。
まず { } が の基底となるための条件は
(イ)勝手な元に対して
(ロ) として
となる
という2つの条件を満たすことである。(イ)について
いま { } は の基底であるから
……(13)
となるような実数が存在する。一方、が正則行列であることに注意して(4)式の両辺に右からを掛け算してみると
……(14)
よって (13)式に(14)式を代入することで
(ロ)について
いま、 として
……(15)
である、と仮定してみる。このとき(4)式を(15)式に代入してみると
……(16)
ここで(16)式は { } という基底を用いた「番地割り」のもとで
……(17)
よって(17)式の両辺に左から を掛け算することで
以上より、 は の基底となることが分かる。
一般に として、 の基底 { }を勝手にひとつ取ってきて、 を
……(18)
というように表わすとき{ }が の基底となる条件は が正則行列( )となることである。いま の基底全体の集合を
すると、n次元の線形空間 の基底と n行n列の正則行列の間の
このとき注意しなければならないことは、この同一視を考えるためには最初にひとつ という の基底を、選ばなければならないが、この最初の「基点」を取り換えると同一視の仕方も変わってしまうことになる。したがって、 のそれぞれの元に対して、 のどのような元を対応させて同一視を行っているのか、ということを常に意識する必要がある。
ところで、これまで線形空間 の基底の元の個数は変わらない、ということを暗黙の裡に承認して考察してきた。果たして、線形空間 の基底の元の個数は、基底の取り方によって変わらないのだろうか。
いま として も の基底である、と仮定する。すると は の基底であるから適当な m行n列 の行列を用いて
……(19)
全く同様にして も の基底であるから適当な n行m列 の行列を用いて
……(20)
と書き表すことができる。ここで(20)式に(19)式を代入すると
より
( m行m列の単位行列)
……(21)
また全く同様に、(19)式に(20)式を代入すると
より
( n行n列の単位行列)
……(22)
そこで、トレースのもつ重要な性質 を援用すると
以上の考察より「線形空間 の基底の元の個数は基底の取り方には依らない」ことが分かる。