写像とは、一般に2つの集合
において、ある規則によって
のどの要素にも、
の要素が1つずつ対応しているとき、この規則を
から
への写像 (mapping) といい、記号
などを用いて
と表わす。したがって、集合
の各元に対してそれぞれ集合
の元をただひとつずつ指定するような規則
によって、〇〇写像とか呼ばれる。
そこで、「線形写像」とは、一般に、線形空間
に対して
から
への写像
が
(イ) 勝手な2つの元
に対して
となる
(ロ) 勝手な元
と勝手な実数
に対して
となる
という2つの条件を満たすとき、
は線形写像である、という。
すなわち、線形空間は「足し算」や「スカラー倍」ができるという代数的な構造をもった集合として定義されるが、線形写像は、こうした線形空間の構造を保つような写像として定義される。
ところで、線形空間は「基底」という概念を用いて線形空間に「番地割り」をすることができる。
線形空間に「座標付け」する
いま、2つの線形空間
の間の線形写像
が勝手にひとつ与えられているとして、それぞれの線形空間
に「番地割り」をして、写像
を「番地」の言葉で表してみるときに、写像
がどのような「姿」にみえるか、ということを考えてみる。(
,
と仮定する)
すなわち、線形空間
の基底{
,
} を勝手にひとつ取ってきて
というように「番地割り」することで、
というように同一視して考えるとどういうことが分かるのか、ということを考えてみる。
すると、線形写像に対する(イ)(ロ)という2つの条件を用いると、勝手な元
に対して、
は
… (イ)より
… (ロ)より
というように表わせる。したがって
という線形空間
の基底ベクトルの線形写像
による行き先
を決めると、勝手なベクトル
の行き先
も決まってしまう、ことが分かる。
そこでさらに、線形空間
の基底{
}を勝手にひとつ取ってきて
というように「番地割り」することで
の方も
というように同一視して考えてみる。
このとき、
の基底{
}の行き先、
を、
の基底である {
} を用いて
というように表わすとする。すなわち
すると、線形空間
上の「足し算」や「スカラー倍」は 「番地の集合」
上の「足し算」や「スカラー倍」と対応するから
となる。
ここで
というように書き直せることに注意すると、結局
に対応する「番地」は
として
となる。
すなわち、2つの線形空間
の間の線形写像
を「線形空間
のどの点が、線形空間
のどの点に写る」という形で写像
を記述するのではなく、それぞれの線形空間
に「番地割り」をして「線形空間
のどの「番地」が線形空間
のどの「番地」に写る」という形で写像
を記述しようとすると、線形写像
は行列
を掛け算することによって定まる写像
のように見え、行列の「姿」に化けることが分かる。
一般に、2つの線形空間
の間の線型写像
に対しても全く同様の議論をすることができる。すなわち、この場合には
として
の基底{
}と
の基底{
}を勝手にひとつずつ取ってきて
という「番地割り」によって
というように 「座標付け」してみると、線形写像
は、適当な
行
列の行列
を掛け算するような写像
のようにみえることがわかる。このようにして得られる行列
を線形写像
の(
の基底{
}と
の基底{
}に関する)
表現行列 と呼ぶ。したがって、「基底」が変わると当然 「表現行列」も変わってくることに注意。