星はなぜみえる?

冬の夜空は、天体観測マニアにとって絶好の観測のシーズンとなりますが、一般の人でも冬に夜空を見上げたとき、星のひとつひとつがキラキラと輝いていると、感じたことがないでしょうか。しかし(当然の事ながら)この広い宇宙には、弱過ぎて私たちが目にする事が出来ない 「見えない星」がたくさんあります。それでは、何故弱い遠くの星が見えるのでしょうか。そもそも、「星はどうして見えるのでしょうか」。
そのために私たちの身の回りの出来事を例に考えてみましょう。

いま、波長 550nm (緑色)の光を放出する 1000 W のランプがあるとして、光はあらゆる方向へ等方的に放出されるとした場合、

 (a) 単位時間あたりに放出される光子の数
 (b) 100 m 離れた地点で光線に直角な 1cm 平方の面積に単位時間あたりに入る光子数
 (c) 瞳の直径を 5 mm として、1秒間に100個の光子が入れば視細胞が視覚を感じるとした場合、どのくらい遠方からランプを認識できるか。

光エネルギーは光に含まれる光子の数と光子の周波数(波長)によって決まる。
光子のエネルギーはその振動数にプランク定数 h をかけたもので、以下のように表される
E=hν=h·c/λ ……  (1) E:光子のエネルギー(J) ν:振動数(Hz) λ:波長(m) c:光の速さ =2.998×108(m/s) h:プランク定数 =6.626×10-34(J/s)

(a)
(1) より、光子1個の持つエネルギーは

E=h·c/λ = 6.626×10-34× 2.998×108 /550×10-9 =3.612×10-19(J)
ランプは 1000 W =1000 [j/s] であるから

1000/ 3.612×10-19= 2.769×1021(個)

(b)  100 m を半径とする球の表面積 S とすると
S= 4π×1002 =1.257×105 [m2] 1cm2= 1×10-4[m2]
求める光子数を n とすると
n= 2.769×1021× 1×10-4/ 1.257×105 = 2.203×1012

(c)  瞳を直径 5mm の円であると考えると
s=π· (5×10-3/2)2 = 1.963×10-5  [m2] 
求める半径を R 、球の表面積を S' とすると
100=sS' ×光子数 =(1.963×10-5 /4πR 2.769×1021
したがって、
R= 1.963×10-5 × 2.769×1021 /( 4π×100) = 43.26×1012 = 6.58×106[m]

そこで視界を夜空に向けると、太陽に最も近い 4.3 光年の距離にある α ケンタウルスは太陽とほぼ同じ発光量の 0等星であることが知られている。実測によれば同星から 2×10-8 [W/m2]  のエネルギーが地球に届いているという。そこで、視神経細胞分子の断面積を 10-10m2 とすると、その分子1個は同星より 2×10-18[ j/s] の光エネルギーを受容していることになる。
 いま、視細胞に約 1eV=1.6×10-19[J] の光エネルギーが届くと反応して光を感知することができるとすると、光のエネルギーが波動として空間に一様に分布して届くのならば、 1.6×10-19[J]÷2×10-18[J/s]1/10[s] で視細胞は反応して星を感知することになる。

ところで、肉眼で見える最も暗い6等星は、0等星より約 300 倍暗いので、6等星を見るには 1/10×300=30[s] 間ジッと見つめないと見えないはずである。しかも、人間の脳は目から送られてくる画像を 3/100 秒ごとに更新しなければならない(つまり写真でいえば、目は 3/100 秒より遅いシャッターは切れない、なぜなら光を受容して応答した視細胞は、次の光を受容するために速やかにもとの静止状態に戻る必要がある。いつまでも細胞の応答が止まらないと、次の光刺激が来ても、それを前の刺激と区別して受容することが出来ない)。このようなシステムでは、光のエネルギーが波として伝わるとすると6等星は絶対に見えないはずである。

 上の考察では、光のエネルギーの流れを連続的に考えて分子反応を起こす時間間隔で光から分子にエネルギーが渡されるとした。しかし、光はエネルギーを持った粒子=光子であるとすると、エネルギーの受け渡しは瞬時に起こると考えられる。例えば波長 500nm [n=10-9 ] 可視光の光子1個のエネルギーは、
E=h·c/λ= 6.626×10-34× 2.9979×108 500×10-9 =3.97×10-19[J]
となり、視細胞中の分子反応を起こすには十分であることが分かる。
つまり、私たちの目が星の光を捉えることが可能なのは、光のエネルギーは一つ一つの光子により運ばれて目の視細胞がそのエネルギーを持った光子に反応することで見えるということ、光の粒子説では暗い星でもすぐに見えることがうまく説明できる。

さて、私たちはヤングやフレネルによって行われた光が波動であることを示す見事な実験、あるいはヘルツによって行われた電磁波が波動であることを示す見事な実験の数々によって、光があたかも水面を伝わる波や弦を伝わる波のようなものであると無意識のうちに思い込んでいる。さらにホイヘンスやマクスウェルなどの見事な理論的説明も光はそのような波であると知らず知らずうちに思い込むことを助けている。
 これが「躓きの石」になっている
私たちは光の進む様を見ているわけではない。私たちが知ることができるのは<いまは>光が物質から放たれた場所と時間、そして光を受け取った場所と時間だけである。その途中でどのようなことが起こっているのかは決して知りようがない。もし私たちが思い込んでいるように光の波が進んでいる様を直接見ることができれば、動いている観測者と静止している観測者が見る光の速度は違って見えるだろう。しかしそのようなことはできない。私たちができるのはそれぞれの観測者がもっているモノサシ棒でもってその一端から放射された光の発射された時刻とモノサシ棒の他端に光が到着したときの時刻を観測者(モノサシ棒)とともに動く時計によって測り、それぞれのモノサシ棒の目盛りと時計の経過時間によって光の速度を決めることができるだけである。(そのとき、光が出発した時間と光を受け取った時間の差を絶対的に決める方法がないことに注意する)
そして、私たちは分かったようなわからないような問題に悩むのである
ー-光は波のように、粒子のように振舞うー-。

光の分類

物質のエネルギー状態には、固有の基底状態 (ground state) と励起状態 (excited state) があり、状態間の移動により状態間のエネルギー差に応じ光や熱としてエネルギーの吸収と放出が起こる。
 原子核内の状態遷移で発生する光は、γ 線と呼ばれる。放射性核種が崩壊して質量や陽子、中性子の比率が変わり放出された中性子を α 線や中性子線(α 崩壊)といい、放出された電子を β 線(β 崩壊)、電磁波(光)を γ 線( α 崩壊)という。 γ 線と X 線との区別は波長ではなく発生機構すなわち状態遷移が原子核で起きたか、軌道電子で起きたかの違いによる。
 電子遷移では内殻電子(主量子数 1 の K 殻や 2 の L 殻など)が係わる場合に波長の短い(エネルギーの大きい)X 線が、外殻電子(最外殻電子、分子軌道電子など)が係わる場合には X 線よりエネルギーのの小さい紫外線や可視光の放出(発光)や吸収(吸光)が起きる。
 分子の運動状態(回転、振動など)の遷移では波長の長い(エネルギーの小さい)赤外線や熱としてエネルギーの放出や吸収が起きる。