Jordan 標準形 (2)

< Jordan 標準形 >

天下り的ではあるが、一般に、勝手な自然数 nN と勝手な複素数 λC に対して、

Jnλ= λ10 0 0λ1 00 0 λ1 000 0λ n 個
というように、対角線上に λ が並び、その一段上だけに 1 が並んだような行列を Jordan 細胞(Jordan block) と呼び、対角成分 λ と行列のサイズ k を用いて Jkλ と表記する(あるいは、Jλk と書く人もいる)。
また、n1n2nkN,λ1λ2λkC として、
J= Jn1λ1 Jn2λ2 Jnkλk
というように、対角線上に Jordan 細胞がいくつか並んだような形の行列 JJordan 標準形と呼ぶ。

<Jordan 細胞>

Jordan 細胞をもう少し詳しく見てみよう。
Jordan 細胞 Jnλ は、いま、
N= 010 0 001 00 0 01 000 00 (1)  とすると、 Jnλ= λI+N
というように, スカラー行列 λI と「見やすい形」のベキ零行列 N の和の形に表わすことができる。
それでは、ベキ零行列が、どうして「見やすい形」のベキ零行列 N の形に表わされるのだろうか。
いま、 n 次の正方行列 A が n 次のベキ零行列であるとすると、

An-1O An=O  そこで eCn An-1eO  となる e が存在するから、 An-1e, An-2e,⋯, A1e.A0e  を Cn  の基底としてとってきて、行列 P を、 P:=( An-1e, An-2e,⋯, Ae.e⁡)
とすると、P は正則行列で逆行列が存在する。
c1e+ c2Ae+ c3A2e +⋯+ cnAn-1e =O  とおいて、An-1 を左からかけると、 c1An-1e =O  より、c1=0  また、 c2Ae+ c3A2e +⋯+ cnAn-1e =O  において、An-2 を左からかけると、 c2An-1e =O  より、c2=0  同様にして、 c1=c2 =⋯=cn=0  したがって、 An-1e, An-2e,⋯, Ae.e  は、一次独立である。

いま、ei を Cn の自然基底として P-1AP の第一列目を取り出すと、
P-1AP· e1 = P-1A·P e1 = P-1A· An-1e = P-1· Ane =O
したがって、P-1AP の第一列目は、ゼロベクトルであることが分かる。
次に、 P-1AP の第二列目を取り出すと、
P-1AP· e2 = P-1A·P e2 = P-1A· An-2e = P-1· An-1e  ところで、 Pe1= An-1e  両辺に、左から P-1 を掛けると P-1Pe1= P-1An-1 e e1= P-1An-1 e
したがって、P-1AP の第二列目は、e1 となることが分かる。
さらに、 P-1AP の第三列目を取り出すと、
P-1AP· e3 = P-1A·P e3 = P-1A· An-3e = P-1· An-2e  ところで、 Pe2= An-2e  両辺に、左から P-1 を掛けると P-1Pe2= P-1An-2 e e2= P-1An-2 e
したがって、P-1AP の第三列目は、e2 となることが分かる。
いま、P-1AP
P-1AP 010 001 000 000
となっていることが分かる。
さらに、同様の作業を繰り返すと、第 n 列目は、
P-1AP· en = P-1A·P en = P-1A· e = P-1· Ae  ところで、 Pen-1= Ae  両辺に、左から P-1 を掛けると P-1Pen-1 = P-1Ae en-1= P-1Ae
したがって、P-1AP の第 n 列目は、en-1 となることが分かる。
すなわち、
P-1AP= 010 0 001 00 0 01 000 00
となる P が存在する。
したがって、

P-1AP= Jn0 (2)

「ベキ零行列」のJordan 標準形

n 次の正方行列 A が「ベキ零行列」であるとすると、行列 A は、Jordan 細胞を用いて
P-1AP= Jr10 0 Jr20 0Jrs0 (3) ⁡( ただし、 r1+r2+⋯+ rs=n )
と表わすことができるような行列 P が存在し、「ベキ零行列」は Jordan 標準形へ変換することができる。そのことを確認する。
A の次数を n として、  まず、n=1 の場合は、 A=0= J10  したがって、これは Jordan 行列である。
 ただし、A=O  は、J10 を対角成分に並べたものがゼロ行列なので、AO と仮定する。

いま、A はベキ零行列なので、

Ak=O Ak-1O (4)  となる kN が存在する。
そこで、Ak-1eO  となる eCn を一つ固定し

W:=span Ak-1e, Ak-2e,⋯, Ae.e

とすると、W は A の不変部分空間になる。すなわち、
xW AxW  が成り立つ。そして、 A Ak-1e Ak-2e ⋯  Aee = Ake Ak-1e Ak-2e ⋯  Ae = 0 Ak-1e Ak-2e ⋯  Ae = Ak-1e Ak-2e ⋯  Aee 01 0 01 1 00 = Ak-1e Ak-2e ⋯  Aee Jk0
したがって、k=n ならば、W の基底に関する表現行列は、Jk0 である。

以下では、2k<n と仮定する。  

このとき、もしも、Cn が W ともう一つの A-不変部分空間 U によって

Cn = UW
となれば、次の関係を得る。

Jk0 O O ↕ k  ↕ n-k  そこで、Cn  が Cn =U+W  かつ UW=⁡{0⁡}
となることを確認しよう。

考え方は、 Cn U+W として、矛盾をつく背理法で考える。
A-不変部分空間 U で、UW=⁡{0⁡} となるもののうち、次元が最大のものを取る。
Cn U+W ,  UW=⁡{0⁡}  と仮定する。すると、 αU+W αCn  が存在することになる。ところで、 Ak=O  より Akα=O U+W  すると、はじめて U+W に入るような、 Al-1α U+W Alα U+W  条件を満たす l2lk が存在する。  Alα U+W = u U + i=0 k-1 ci Ai e W (5)  (5)式の両辺に Ak-1  を左からかけると、左辺は  Ak-1 Alα = Al-1 Akα =0  右辺は、 = Ak-1u + c0Ak-1 e  したがって、 -Ak-1u U = c0Ak-1 e W (6)  また、 UW=⁡{0⁡}  より、(6)式の値は 0 である。  ゆえに、c0=0  そこで、c0=0  に注意すると、(5)式は u= Alα - i=1 k-1 ci Ai e = A Al-1 α - i=1 k-1 ci Ai-1 e  ここで、 b:= Al-1 α U+W - i=1 k-1 ci Ai-1 e W  とおくと、 bU+W  かつ、 AbU
いま、U と b の張る部分空間をU' とすると、

dimU'= dimU+1  で、U' は、A -不変である。  (なぜなら、U は、A -不変であり、 Ab=uU  )  そこで、cU'+W とすると、 c=y+tb yU, tC  したがって、 tb=-y+c U+W bU+W  ゆえに、t=0  すると、 y=cUW ={0⁡}  ゆえに、 U'W={0⁡}  これは、U  が次元が最大という仮定に反する。