m行n列の行列 A に対して、A を掛け算すると
のベクトル全体の集合を、
と表わし、行列 A の「核(Kernel)」と呼ぶ。
また、
という形で表わせるような
のベクトル全体の集合を、
と表わし、、行列 A の「像(image)」と呼ぶ。このとき、
は、それぞれ、
の線型部分空間になる。
ところで、いま、与えられた行列 A を、行に関する基本変形や、列に関する基本変形を用いて
というように変形したとしよう。すると、「行や列に関する基本変形を施すこと」は、「対応する基本行列を左や右から掛け算すること」であると解釈することができるから、(3)、(4)式より、適当な基本行列
を用いて、
と表わすことにすると、 は正則行列であり、行列 は、それぞれ、
というように表わすことができる。
このとき、 は m 行 m 列の行列であり、 は n 行 n 列の行列であることに注意する。
そこで、基本変形した行列
がどうなるか、を考えてみよう。
< の場合>
いま、
を、勝手にひとつ取ってきたとすると、
の定義から、
となることが分かる。
< の場合 >
いま、
を、勝手にひとつ取ってきたとすると、
の定義から
となることが分かる。
それでは、以上の考察のもとに、具体的事例で
の基底を求めてみよう。
< の基底を求める>
まず、
について考えてみる。そのために、行列
A に対して
行変形のみを施して「精一杯の見やすい形」に変形することを考えてみる。(r数字は行)
そこで、
いま、
を
そこで、
の基底になることを確認しよう。
まず、
の基底であるための条件は
(イ) 勝手な元 に対して
となるような実数 が存在する
(ロ) として
となる。
という条件が満たされることである。
このうち、(イ)という条件は (7)式より明らかであるので、(ロ)について検討してみよう。
であるとする。このとき、右辺のベクトルを成分を用いて具体的に書き下してみると、
以上から、(イ)、(ロ)という二つの条件が満たされることが分かるから、
の基底となることが分かる。また、(5)式を考慮すると、
の基底として、
が取れることが分かる。特に、
となることも分かる。
< の基底を求める>
そのために、行列
A に対して
列変形のみを施して「精一杯の見やすい形」に変形することを考えてみる。(c数字は列)
そこで、
の基底を求めることを考えてみる。いま
を
として の基底になると思われる。
まず、
の基底であるための条件は
(イ) 勝手な元 に対して
となるような実数 が存在する
(ロ) として
となる。
という条件が満たされることであるが、
の場合と同様の考察を行なうことで、条件が満たされることを確認できる。すると、(6)式より
の基底として、
が取れることが分かる。特に、
となることも分かる。
以上みてきたように、行列の基本変形によって、
の基底を個別に求めることができるが、皆さんの中には
の基底の時点で一緒に
の基底を習うか習った?かもしれない。 そこでは、表現行列
の列ベクトルの一次独立性に重点が置かれて、像の基底としての性質がスッキリしない、という印象を持たれたかもしれない、そこで、そのことを少し考えてみよう。
いま、行列
を例題と同じく
という形に表わせるということに注目して、 の基底になるかどうかということを考えてみることにする。
すなわち、
(イ) 勝手な元 に対して
となるような実数 が存在する
(ロ) として
という二つの条件を満たすかどうかということを考えてみる。
まず、(イ)という条件は、(9)式より自動的に満たすことは明らかである。そこで、(ロ)の条件について考えてみよう。
したがって、(ロ)という条件が満たされるかどうかということは、
となるかどうかということと同じことである、といえる。すなわち、
ならば、(ロ)という条件は満たされない、ということが分かる。
ところで、例題の場合、前半で見たように、
がわかった、とすると、
の基底ではない、ことが分かる。それでは、 の基底はどうなるだろうか。
いま、
であることを想起すると、
をとると、
というように、 を用いて、 を表わせることが分かる。
というように表わせることが分かる。
それでは、
の基底になりうるだろうか。そのためには、
(イ) 勝手な元 に対して
となるような実数 が存在する
(ロ) として
という二つの条件を満たす必要がある。
まず、(イ)という条件は、(13)式より自動的に満たすことは明らかである。そこで、(ロ)の条件について考えてみよう。
いま、
として
となると仮定してみる。このとき、 の項を付け加えると
となることが分かる。
そこで、 の元のうち、ベクトルの第3成分と第4成分
が共に 0 となるような元を考えることになるが、(11)式より となるもの、すなわち、0 しか存在しないことが分かるから
となることが分かる。
したがって、今度の場合、(ロ)という条件も満たされることが分かるから、
が取れることになる。
ところで、皆さんの中には、どうして
で表わすのか、と疑問に思った人がいるかもしれない。もちろん、
として、
を消去することも可能だが、
という形に注目すると、
から線型独立であることの判別が容易に分かる。
このように、
の基底が分かったとすると、その情報を用いて
の基底を求めることができる。そこで、注意して欲しいことは、こうして出来たベクトルは行列
の成分をそのまま持ってきたので,問題によっては数が大きな場合もある、ということ。
例えば、例題では、 の基底として
が求まりました。「像の基底を求めよ」という問題なら別にこのままで良いが、求めた基底を「正規直交化」せよ、となると少々厄介です。
そこで、 を並べて、列のみの基本変形を行なってみます。
の基底は というよりコンパクトな基底も取れることが分かる。