補論・行列値関数の微分

≪行列値関数の微分とは≫

いま。2行2列の行列に値をもつ関数である行列値関数 Ψx

Ψx= ax bx cx dx

勝手にひとつ与えられた、として、この関数を微分することを考えてみよう。
このとき、一変数 fx に対する

dfdx x = limh0 fx+h -fx h
という微分(係数)の定義式は、 fx を Ψx に置き換えても、そのままの形で意味を持つということ、に注意する。
 すなわち、

Ψx+h -Ψx = ax+h bx+h cx+h dx+h - ax bx cx dx = ax+h-ax bx+h-bx cx+h-cx dx+h-dx  というように表わすことができるから、 Ψx+h -Ψx h = 1h· ax+h -ax bx+h -bx cx+h -cx dx+h -dx  したがって、 limh0 Ψx+h -Ψx h = limh0 1h· ax+h -ax bx+h -bx cx+h -cx dx+h -dx = limh0 ax+h -ax h limh0 bx+h -bx h limh0 cx+h -cx h limh0 dx+h -dx h  すなわち、 dΨdx x = a'x b'x c'x d'x

となることが分かる。
 全く同様に考えると、一般に m 行 n 列の行列に値を持つ関数

Ψx= ψijx

に対して、その微分は、それぞれの行列成分を微分することに他ならないということが分かるから、

dΨdx x = ψij'x

という式によって与えられる、ということが分かる。

また、ψx を一変数行列値関数、B を定数行列として、 Ψx

Ψx= ψxB  という特別な形をしている場合には Ψx+h -Ψx h = ψx+h -ψx h ·B  というように表わせることが分かるから ddx ψxB = ψ'xB

というような計算ができることが分かる。
すると、例えば、0nN として
ddx xnn! An= xnn!' An = xn' n! An = n·xn-1   n!   An = xn-1 n-1! An というような計算ができる。

次に、「積の微分則」を見てみよう。
いま、

Φx= φij x  ,  Ψx= ψjk x

を、それぞれ、l 行m 列の行列に値を持つ関数、m 行n 列の行列に値を持つ関数として、l 行n 列の行列に値を持つ関数 Φx Ψx の行列成分を

Φx Ψx = δik x  と表わすことにする。すると、 δik x = j=1m φij x ψjk x  と表わせるから δik' x = j=1m φij x ψjk x' = j=1m φij' x ψjk x + φij x ψjk' x = j=1m φij' x ψjk x + j=1m φij x ψjk' x
ところで、上の式の右辺の第一項、第二項は、それぞれ行列値関数 Φ'xΨx,ΦxΨ'x の i 行 k 列成分に等しいことに注意すると、

ddx Φx Ψx = δik' x = dΦdx xΨx + Φx dΨdx x

すなわち、行列値関数の微分においても「積の微分則」が成り立つ、ことが分かる。