基本変形とは、与えられた行列の行や列を一定の手続きで変形していく操作で、具体的には
〇 行(列)に関する基本変形
(a)ある二つの行(列)を入れ替える
(b)ある行(列)に別な行(列)の何倍かを足す
(c)ある行(列)を何倍かする(ただし、0倍することは許さないものとする)
という三種類の操作を「行(列)に関する基本変形」と呼ぶ。
その意味するところは、「行列語」で 例えば2行2列の場合
、
、
という「基本行列」を右からあるいは左から、掛け算することである。
基本変形とは
ところで、数ある行列の中で、例えば
、
、
……(1)
などの行列のように、「対角線上にいくつか 1 が並び、他の成分がすべて 0 になっているような行列」は、
とても「
simpleな見やすい形」をした行列であると考えることができる。
そこで、行列 A が, 勝手にひとつ与えられたときに、行列 A の行や列に何度か基本変形を施すことによって、 A を (1) 式に現われる行列のような「simpleな形」に変形することができるかどうかということを考えてみよう。
A が 3行 3列の行列で 零行列でないと仮定する。いま
という行列が勝手に一つ与えられたとすると、仮定より行列 A は零行列ではないので、行列 A の成分の中には 0 と異なる
成分が存在することになる。そこで、その成分の現われる行と列に対して、(a) という操作を施すと、行列 A は
というように、1行 1列目の成分
が 0 でないような行列に変形することができる。
さらに、 一行目を
倍してみると
……(2)
という形の行列に変形できることが分かる。
このことは例えば
として、行列
の2行3列目の成分が0でないとすると
1行目と2行目を入れ替える
すなわち
さらに、1列目と3列目を入れ替える
すなわち
さらに1行目を
倍する
すなわち
のように変形できるということです。
そこで、(2)式の行列の1行目と1列目の成分を
というように、表すとすると
2行目+1行目
3行目+1行目
より
さらに、
2列目+1列目
3列目+1列目
より
というように変形できることが分かる。
したがって、3行3列の行列
を「simpleな形」に変形する問題が
……(3)
という形の行列を「simpleな形」に変形する問題に帰着するになる。
そこで、(3)式の行列の残った成分に対して、同様の変形を繰り返すと、最終的に行列
は
のうちのいずれかかの「simpleな形」に変形できることが分かる。
以上と全く同様の推論を繰り返すと、勝手にひとつ与えられた m 行 n 列の行列 A に対して, A の
行や列に何度か基本変形を施すことによって, 行列 A を
というような「simpleな見やすい形」に変形できることが分かる。
「基本変形する」ということは、「対応する基本行列を右や左から掛け算する」ということだから、
この事実は,勝手にひとつ与えられた行列 A に対して,適当な基本行列
が見つかって
という形に変形できるということを意味している。
そこで
とすると、このことは、一般に
勝手にひとつ与えられた m行n列の行列 A に対して、適当な m行m列 の正則行列 P と n行n列 の正則行列 Q が存在して、正則行列 P、Q を掛け算することで行列 A を
というように「simpleな見やすい形」に変形できると解釈することができる。
このとき対角線上に残った 1 の数 r を行列 A の階数 ( rank ) と呼ぶのであった。