日本の支配勢力

社会は、内外からの攻撃にたいしてその共同の利益を守るために、自分のために一つの機関をつくりだす。この機関が国家である。この機関は、発生するやいなや、社会にたいして自立するようになる。こうして、国家という形で、人間を支配する最初のイデオロギー的な力がわれわれにたいして現われる。
個々の人間の場合に、その人を行為させるためにはその人の行為の推進力がすべてその頭脳を通過して意志の動機に変わらなければならないように、すべて国家も国家の意志を通過しなければならない。

戦後の支配構造

日本国家は、「法治国家」として存在し、国家権力は、イデオロギー的な法的権力としての最高の支配権を表現している。
しかし、日本の統治権力は、戦後の連合国による占領、51年9月のサンフランシスコ条約と日米安保条約による米軍基地など、国土と軍事、外交などに脆弱性を残す一方で、国内的な行政権力としては、他の先進諸国には例を見ないほど強力な、指揮・主導権を温存してきた、と言われる。とりわけ強大に集権化された官僚機構の中枢である、大蔵・通産を軸とした内閣諸省は、全産業分野・全業種と地方行政諸機関に対して、財政・法制および許認可権などを武器にして、行政的指揮・命令権を掌握している。

ところで、国家権力の意志、すなわち法律を決定するのは、議会で多数を制する政党の意志である。したがって、戦後長い間にわたってそれを専有した自民党の意志が、「国家意志としての法律の内容を実質的に規定してきた」。

その自民党を資金面から強力に支えてきたのは、銀行・鉄鋼・電力・・の御三家にはじまり、自動車・電機・建設・保険・商社・電鉄・証券・石油化学など、日本資本主義を先導する基幹産業の巨大独占資本である。自民党は彼らの総意と要求通りの産業政策を、最優先にして推し進めてきた。具体的に言うならば、貿易通商政策・海外投資・税制などでの保護・優遇措置とともに、文教・科学技術・ハイテク・軍事・公共土木事業・原子力・エネルギー・宇宙開発などを積極的に展開して、つねに莫大な規模の国家予算を喰いつぶしてきた。この意味で、経団連を中心とする経済三団体への組織的終結によって集成された彼らの総意は、現実的な総資本的意志として、つねに国家意志の中でも、とくに経済政策として発現する経済的国家意志の実質的内容を、大きく規定してきたといえる。

「産業界とくに財界三団体に結集した独占資本は、その特殊的意志・要求を、法律・政策としての国家意志のなかに大きく反映させるために、日頃から自民党および派閥・有力議員に巨額の政治献金を行なってきた。」

また、議会の首相指名選挙を経て選ばれた新首相が内閣を組織する。内閣は、内閣総理大臣とその他の国務大臣という複数のメンバーから構成され、「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする」と定められており、閣議決定とは、このような「合議体」としての内閣の正式な意思決定を意味する。内閣は最高行政機関であり、内閣とその下に置かれる省庁などの行政組織を一体のものとして政府と呼ぶとすると、閣議決定は「政府内の最高の意思決定」として行政機関を事実上拘束することになる。また、自民党は、その指揮中枢が直接内閣を構成し、巨大な官僚機構の頂点に転出することによって、とくに高級官僚を人事権の面から、強力に抑え込むことによって、「官邸主導」と呼ばれるような政治構造を構築してきた。

財界をはじめとする産業界は、資金・票の提供と引き換えに自民党を使って、官僚機構の強圧的支配を回避したり、補助金の獲得・税制上の優遇・許認可上の便宜など、多様な行政上の便宜・供与を獲得してきたのである。

これが、戦後自民党型の政治構造である。

支配構造の変質

しかし、日本経済は90年代に入ると地価や株式が急落し、企業の倒産が相次ぎ、「バブル経済」が崩壊、景気の低迷と失業増大で、個人消費も大きく冷え込み、かってない長期不況に見舞われた。一方、88年に発覚した「リクルート事件」に続き佐川急便・金丸事件、茨城・宮城などでのゼネコン汚職等等、企業と政治家をめぐる金権・腐敗事件があいつぎ、93年7月の総選挙で自民党は過半数を割り、55年の結党以来はじめて政権の座を失なった。

経団連は、過去毎年100億円以上の政治資金を主に自民党に提供してきたが、1993年9月、「企業献金については、廃止を含めて見直す」との方針を発表します。そこで、自民党に代わる「非自民」政権が、金権政治一掃として打ち出したのが、「政治改革」の名での小選挙区制導入と「企業・団体献金をなくす」という口実で導入された「政党助成金」です。

この過程で注目されるのは、そのさきがけとなった、89年6月に発足した第8次選挙制度審議会です。第8次審議会は、学識経験者の委員のみで構成され、会長には、小林与三次「読売」社長がすわり、委員27人中11人が大手メディア関係者。しかも、その顔ぶれは日本新聞協会の会長、各紙の社長、論説委員長、解説委員など、社論の形成に大きな影響を与えうる人たちでした。こうして、マスメディアは、8次審を通じて政府に取り込まれ、以降、小選挙区制導入の一大宣伝機関と化したのです。

一方、「政党助成金」は、「企業・団体献金をなくす」という口実で導入されたにもかかわらず、日本経団連 会長・副会長会議は「政策本位の政治に向けた企業・団体寄付の促進について」 企業、企業人も、政策や政治のあり方について積極的に発言するとともに、政党活動に要するコストの負担を社会貢献の柱の一つとして位置付け、応分の支援を行うべきである。として1994年以来10年ぶりに政治資金の提供に乗り出すことをきめた。しかも、『日本経団連としての「優先政策事項」の設定し、「優先政策事項」に基づく政党の評価』をおこなう、というものです。これは、あからさまに政党を金で買収するようなものです。


自民党への企業・団体献金、3年ぶり増24.3億円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA247AF0U2A121C2000000/
(2022年11月25日 23:00)
経団連は、例年10月に政治献金の判断基準となる主要政党の政策評価を公表する。21年は岸田文雄首相に強いリーダーシップを要請。自民を中心とする与党を8年連続で「高く評価できる」とし、会員企業に与党への献金を呼びかけた。
総務省によると、国政協に100万円超を寄付した企業・団体は約240。このうち2千万円超は26社・団体に上った。1、2位は20年と同様、日本自動車工業会(自工会)と日本電機工業会で、それぞれ7800万円、7700万円だった。
官民を挙げて自動運転や脱炭素社会への対応が迫られる中、自工会とは別にトヨタ自動車が5千万円、日産自動車が3400万円、ホンダが2500万円を献金した。


因みに、「政党助成金」の交付額は、国民1人当たり250円となる315億円余りが総額。試算によると、2022年の政党交付金総額は、自民党159億8200万円、立憲民主党67億9200万円、日本維新の会31億7000万円、公明党29億4900万円、国民民主党15億3200万円、れいわ新選組4億9800万円、社民党2億7100万円、NHK党2億6200万円、参政党7700万円。共産党は、政党交付金の制度に反対しており、交付金を受け取っていない。